森田利一編
御座の方言集   「御座学教室」校訂&発行



はじめに
 本作品は森田利一さんがこれまで志摩市志摩町御座で語られてきた言葉を数十年かけて集め、それを『御座の方言集』として発刊したものである。発刊に至る際には、パソコンへの入力や確認のための会合など、「御座学教室」のメンバーが関わった。元々これは森田利一さんの私蔵本として所有されていたのであるが、たまたま「御座学教室」の勉強会で「御座の方言」を話題として取り上げた時、供されたのを機に、公刊しようということになったのである。
 発刊に当たり、勉強会が留意したのは、以下の諸点であった。
 @編者である森田利一さんの解釈や説明はきわめて具象的・具体的であった。それは編者の個性の現れであると共に、御座地区の生活や御座人の考え方を直截的に示しているとも受け取れたので、説明文にある字句は出来るだけそのままにした。そのため、すでに公刊されていた原口博幸さんの『志摩町和具の方言と訛』、および鍋島さんの『和具の方言』などの同種の作品とは様式、記述方法において若干異なっているきらいがあるが、むしろそれが森田利一さん独特の味わいを持った「方言集」にしていると思っている。
 Aここで採り集められた言葉の中には、大半、志摩地方でも使われているばかりか、場合によれば標準語と思われる言葉が多くある。しかし、森田利一さんはそれらが生活に密着したものとして御座人によく使われていたと判断し、集めたと考えたい。しかも、森田利一さんはこれら集められた言葉も御座地区固有の意味のとらえ方や話し方そのままに説明をしていると考えられるのである。
 B確認のための勉強会で「御座学教室」が関わったのは、思い違いや誤った表記を訂正したこと、一部現代的な仮名遣いや表記に直したこと、編者の見落としたもの、及び『御座郷土地誌』(大正14年刊行。但しこの中には昭和16年までに追加収録されたものも含まれている。御座小学校に保管)に「御座村方言」として収録されているものを、編者の了解のもとに、追加したことである。
 Cアクセントや抑揚などについては私蔵本での記述がなかったので、あらためて森田利一さんの指示や老人会や同地区在住の人の協力を得てつけ加えた。
 もとより、これでもって御座で語られる言葉をすべて網羅したことにはならない。又、森田利一さんが集めた元の方言の中には、所謂「差別用語」が含まれていた。これは志摩の方言の先人である原口さんや鍋島さん達も悩まれた点である。差別はあってはならないという思いと、歴史的文化と事実を伝えるという思いのハザマにあって、森田利一さんも結局数項目を削除し、勉強会も同意した。又一カ所、過去の御座人の固有名詞を使ったものがあるが、これは「ん」の後に番外項として示した。これからも訂正したり追加したりして、より完璧なものへと仕立て上げていきたいと思っている。
                       (「御座学教室」・文責  三橋 浩)


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